富士化学産業株式会社は、プリント基板実装工程で使用する接着剤・粘着剤や
コーティング剤等を開発・販売する企業です。とくに、プリント基板用防湿絶縁
コーティング剤・UV硬化型粘着剤・接着剤に関するキーテクノロジーが強みであり、
エンジニアリングサービスを通じてお客様の課題に寄り添い、最適な製品・
ソリューションを共につくる「協創」をご提案しています。
こちらでは、「ホットディスク法熱物性測定装置 TPS500S」を導入して頂いております。
コラム導入事例

【第三十回 お客様インタビュー[ホットディスク]】富士化学産業株式会社 様
お客様との「協創」でニーズの先へ
富士化学産業株式会社様の会社Webサイト
https://www.fujichemi.com/
Seal-glo防湿絶縁コーティング剤
家電・オフィス機器・産業用機械・住宅設備・自動車・航空機・船舶等で使用されるプリント基板は、湿気・塩分・埃・オイル・ガス等による腐食や故障を防ぐ目的で、防湿絶縁コーティングによる保護が施されます。富士化学産業の防湿絶縁コーティング剤ブランドSeal-gloの歴史は溶剤系コーティング剤から始まり、環境負荷低減を目指して揮発性有機化合物(VOC)非含有を実現した水系コーティング剤、UV硬化型コーティング剤と進化を遂げてきました。さらなる進化の先として当社が着目したのが、放熱機能を有するコーティング剤です。
Seal-glo UV硬化型放熱コーティング剤
近年のAI技術の急速な発展などに関連し、プリント基板の消費電力は年々増加傾向にあります。
消費電力の増加は部品発熱量の増加に直結し、基板設計において放熱性を考慮することは必須事項
となっています。従来の防湿絶縁コーティング剤は樹脂製であるため、熱伝導率は決して高いとは
言えず、放熱性への貢献はほとんどありませんでした。そこで、熱伝導フィラーをコーティング剤に
分散することで、コーティングの熱伝導率を飛躍的に高めたのが、UV硬化型放熱コーティング剤です。
高温部品から低温部品等の排熱先へ向けて、本剤で熱のバイパスを形成することで、効率的な放熱
をサポートします。環境負荷を意識しVOCフリーとしたのはもちろんのこと、UV照射で瞬時に硬化
するため、熱硬化型の放熱シリコーンのような加熱炉や室温養生時間が不要で、お客様のSDGs達成
や工程短縮に貢献します。
京都電子工業製品への一問一答
KEM:導入いただいた経緯を教えてください。
お客様:弊社はプリント基板周辺の課題解決のために製品を開発しております。電子機器に求められる性能は年々高くなり、それに伴いプリント基板の消費電力が増え、基板の発熱問題が重要視されております。弊社としてもその課題に貢献できるよう、新製品としてUV硬化型放熱コーティング剤の開発に取り組んでおりました。
放熱性能を評価する指標の一つとして熱伝導率の測定が必要で、当初はレーザーフラッシュ法での測定を外部機関に委託しておりました。しかし、測定のたびにコストや時間がかかる上、平面方向の熱伝導率測定が難しいという課題がありました。当社のUV硬化型放熱コーティング剤は基板平面方向への熱伝導により発熱部品の放熱を促進するため、平面方向の熱伝導率が特に重要なのです。
そのような中で、Hot Disk法による測定装置であるTPS500Sは、平面方向に特化した熱伝導率の
測定モードもある点に魅力を感じ、導入を決定いたしました。測定モードを変えて2回測定すれば、
平面に垂直な方向の熱伝導率も計算できるということを京都電子工業様に助言いただいて、頼もしく
感じたことを今でも覚えています。
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KEM:装置導入によってどのようなメリットが得られたでしょうか?
お客様:まず、平面方向の熱伝導率が測定できる点には大いに満足しております。
また、開発効率も上がりました。製品開発においては、どの材料をどの割合・条件で組み合わせるのが
最適か、試作と測定を繰り返す必要があります。その際、外部機関での測定を利用すると、どうしても
測定がボトルネックになり開発スピードに影響します。さらに、測定のたびにコストもかかりますので、
測定数を切り詰めることとなり、本来得られたであろう知見を見過ごすおそれがあります。
Hot Disk法の測定装置は、前処理が不要で簡便に測定が可能なこともあり、外部機関を利用した測定と
比べ速やかに測定結果を得られます。導入初期は測定メソッドの確立に多少の試行錯誤が必要でしたが、
一度確立してしまえば、そのメソッドを基に安定して簡単に測定を行える点が非常に良かったです。
また、装置にはシーケンス機能が搭載されており、繰り返し測定が容易で、この観点からも開発現場
での効率化に大きく貢献しています。
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KEM:今後のKEMに期待することは何かあるでしょうか?
お客様:貴社のホームページを拝見すると、水分計や滴定装置に関するアプリケーションノートは豊富に
掲載されている印象を受けました。一方で、QTMやTPSシリーズに関する情報はまだ少ないように感じて
おります。
これらのアプリケーションノートが充実すれば、貴社装置をご利用中の方はもちろん、未導入の方にとって
も熱伝導率測定のヒントや参考情報となるのではないかと思います。今後のご展開に期待しております。
ありがとうございました。
今後とも弊社製品をよろしくお願い申し上げます。