コラム勝木氏 コラム

勝木氏 コラム

第四話「洗米工程」

日本酒醸造界のレジェンド、勝木慶一郎氏による連載コラム第四話です。

■勝木 慶一郎氏 紹介
・醸造家酒造歴:50年
 佐賀 五町田酒造45年、京都 松本酒造5年
・特技:酒造工程の改善
 SDKアルコール分析法の考案
・趣味:写真機、世界中のBeerを一種類でも
 多く飲む、真空管ラジオで短波放送を聴く

 清酒醸造は、玄米重量に対して50%程に精米された白米を更に大量の水を用いて洗う。
平均すると米の重量の10倍の水を使う。洗米の方法は、2つの方法に分ける事が出来る。
一つ目は、人の手による方法を「手洗い」と言い主に麹米と呼ばれる区分に使われる。



 量的に多い掛け米は、機械を使って洗われる。洗米は米と米を擦り合わせる事により効果を出している。何れの方法によって米を洗っても良い。しかし、洗米の工程は洗う操作の重要性もさることながら、いかに効率良く全体の水を均等に切るかが求められる。この最も肝心な操作に用いられる伝統的な道具が「竹(たけ)笊(ざる)」です。


   2020.04.03  石清水八幡宮境内  〒614-8588 京都府八幡市八幡高坊30

竹は世界に3種類あり、竹と笹とバンブーが知られている。中でも日本で固有に生育する「真竹(まだけ)」[ Phyllostachys bambusoides ] は、竹の性質が良く、肉厚で曲げに強く、殆ど伸び縮みが無く経年変化に耐える事から計算尺、製図用定規、弓と矢、さらに扇子、お茶に使う「茶筅」に古い時代から大切に用いられてきた。エディソン 【Thomas Alva Edison:1847-193】は京都産の扇子にヒントを得て「真竹」を「白熱電灯」のフィラメントに用い人工の明かりを灯し、夜の時間の新しい楽しみをもたらした事で知られている。この真竹を採った「石清水八幡宮」の境内にその記念碑がある。この場所は対岸に「天王山」を臨み、眼下に山崎の古戦場が広がり、昔から京へ攻め入る要衝の地として知られている。京都から流れ下り大阪湾に注ぐ宇治川、木津川、桂川の合流地を臨み春には「背割堤(せわりつつみ)の桜」として多くの人が訪れる。


   2020.04.03 国営淀川河川公園 背割堤桜堤 〒614-8312 京都府八幡市

私たち醸造の世界でも、真竹は「笊」に用いるときにその特性を遺憾なく発揮する。精密な目開きと耐水性を兼ね備え抗菌作用も併せ持っている。「竹笊」の持つ水切り性能は類似品と比べての大きな違いは、金属や植物繊維、樹脂ネット等各種の網類とは、目の開き方の違いに秘密が隠されている。玄米を半分近く削り、表面の糠を落とし、小さく削られた白米自体を網目から落とさずに、水を切りながら、しっかり残す。洗米の要件を全て満たす網目は他に類を見ない。

笊の網目
                  笊の網目


                  笊と傾け台

洗米作業は、次のような手順で行う。
手洗いは、「麹米」を洗う時に用いられる。正確な分、秒を争う洗米作業となる中で洗い終わった米を水に漬け、水から上げて付着水を素早く確実に切る事が要求される。この用途に合う道具が求められてきた。道具は使い方でいかようにも使う人の目的にかなう最善の働きをもたらす。人が手で洗う時に肝心な点は、人が洗い持ち上げる事が可能な米の量と、バランスの良いサイズの竹笊がもたらす快適な水切りにあり、使う「竹笊」は45度に傾けて水を切る。ここで竹笊の仕事を最善にするために最初は、笊の目が水平方向に向けて手で持ち、かつ45度に傾けて静置し素早く水を切り、米に含まれている水がぽたぽたと切れた時点で、更に90度回転させて笊の目を垂直にして笊目に残る余分な水分を全て落とします。
機械式の洗米も米同士を擦り合わせて洗米を進行し、ネットコンベヤー上に洗った米を平たく乗せ水平に移動させながら上部から均等にシャワー装置で十分な水を掛け濯ぐ事は手洗いと同様になる。その後に竹笊に取り水を切る操作以降は全く同様になる。
清酒造りの現場は、人とモノ(機械や道具)の調和にある。理論的な解析ができる人、技能者の能力を十分に発揮できる環境整備、この二つの人材を上手く調和させるシステムの構築と実際の作業から導かれる問題点の追求並びにその後の改善と修正を担うマネージャーの存在無しには、200年以上続く会社として存続は望めないし、蔵が目指す目標の酒を追い続けることはできない。机上の考え、道具や機械の性能だけでは、最高の品質の追求は望めない。







秘密を解く鍵は、「平畳み(ひらたたみ)織り(おり)」と呼ばれる畳みの織り方と同様の「竹笊」の持つ独特の目開き、間隙(すきま)が表面張力による水の膜を壊す作用と考えられる。更に手洗いの時に手の表面の皮膚を痛めないように竹の表面を球状に削り水切り性能と安全性の両面に配慮している日本の伝統的な職人の細かい配慮を改めて目にすることが出来る。

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